ぺんぎんのお話

「こおりのなか」

イラスト 氷の中にいる生き物たちと割れ目にはさまったペンギン

南極には大きな氷があります。何千年も昔からずっとある氷です。中をのぞいてみるとたくさんの氷漬けになってしまった生き物たちが見えます。マンモスという牙を持ったゾウや、恐竜という巨大なトカゲ、そして仲間とはぐれ、うっかり氷と氷の間の大きな穴に挟まってしまったペンギン。おっかなびっくりしているペンギンはあたりの大きな生き物たちを見て震えておりました。

「おい、誰だい君は」

凍っていると思っていた恐竜の目がギョロリ。

「なんだなんだ、お客さんかい」

隣にいた尾っぽの長い鳥が言います。それから色んな生き物たちが次々にペンギンさんに話しかけてきました。地上の様子はどうだとか、なんでここに落ちてきたのかとか、ペンギンさんに家族がいることとか、もう家族と会えないこととか、このまま家族に会えずに氷の中で過ごすこととか。

氷の中にいた生き物たちは何とかしてペンギンさんが地上に戻れないか、と考えました。しかし答えはなかなか出ません。とうとうペンギンは泣き出してしまいました。暫くペンギンが泣き続けていると、その涙が氷の間にたまっていきます。氷の間に差し込んだ太陽の光のせいで、涙はキラキラと光りながら落ちていくのでした。

「やーいやーい、僕らと同じになってしまえ」

その様子を見ていたマンモスがそんなことを言いました。ペンギンは悲しくなって一層泣きます。するとどうでしょう。太陽の光で溶けた氷から流れる水と、流れる涙でペンギンの体はぷかぷか浮き始めました。

あたりの生き物たちはマンモスに向かって「ひどいぞ」とか「やめてあげなよ」とペンギンをかばいます。しかしその言い合いはまるで怪獣同士の喧嘩です。それでもペンギンの涙は止まりません。

「やめないね。涙もろとも凍ってしまえ」

そう言いながらマンモスが少しだけ動く大きな足でドシンドシン。すると、その揺れで割れ目の上の方の氷がペンギンのいる水の間に落ちてきて、水かさが増していきました。

それに気付いた恐竜もドシンドシン。みんなでせーのでドシンドシン。ペンギンも一生懸命にメソメソ泣き続けました。割れた氷山の間から水があふれて、ペンギンさんもよっこらしょ。なんとか地上に戻ることができました。辺りは夕暮れ。ペンギンはあのこおりのなかの生き物たちが自分を助けるためにやってくれたことを思い返しました。しばらくじっと氷を見つめてペンギンは家族の元へ帰っていきました。

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