s

ぺんぎんのお話

「大阪湾」

イラスト 海の底で出会ったペンギンと貝

海底。そこは誰とも話すことも関わることもない静かな静かな海の底。1匹の貝がいた。ここには色んなものが落ちてくる。自転車、コップ、誰かの手紙。もう何が落ちてきても驚くことはないと思っていた貝だったが、その日は違った。ペンギンが落ちてきたのだ。なんでも水族館に運ばれる最中に船から落ちてしまったらしい。

ペンギンは辺りを泳ぎながら

「君は波の上の景色をみたことがないの?」と海の底の貝に聞いた。

貝は何も答えない。

「君は話せないの?それとも僕と話したくないの?」ペンギンが楽しそうに続けてそう聞いた。

貝がようやくぶくぶくと重たい貝殻を開いたその時だ。足にヒレ、背中に筒を背負った人間たちの姿が見えた。ペンギンを探しに来たのだろう。

「つかまるものか」

そう言ってペンギンは人間たちのあっという間にすり抜けて、キラキラと輝く光の方へのぼっていった。きっと上で待ち伏せている別の人間たちに捕まるのだろう。そして水族館で仲間たちと過ごすのだろう。僕はと言ったらまた落ちてくる物を眺める毎日なのだろう。

そう思った貝が「誰かと話したいなぁ」とつぶやいた。

何年ぶりになるだろう。貝殻の間からもれた泡が上の方へとのぼっていった。

戻る