ぺんぎんのお話

「宇宙ぺんぎん」

イラスト 土星のまわりをまわるペンギン達

宇宙には実はたくさんのペンギンが住んでいる。例えば土星の輪っか。あれはすごい数のペンギンが星のまわりを一列になって飛んでいるのが輪っかに見えているだけ。例えば流れ星。あれはペンギンのお尻から噴き出すうんちなのだ。キラキラ見えるのはそのせいさ。それから地球からは見えない月の裏側に住むペンギンもいる。今日はそんなペンギンのお話。

月の裏側は真っ暗。初めて見たら何本もの真っ黒な塔のように見えるかも。でも実はこれ塔じゃなくて、何匹もの大きなペンギンが動かずに立っているんだ。もしロケットに乗った人が、横から見たら月のおヒゲさんみたいに見えるかもしれないね。それぐらい大きい。そして動かない。

イラスト 月に立つ巨大ペンギン達

なんのために?なんで?

そう思った人がね、このペンギンを調べるために月の裏側までやってきた。ある宇宙飛行士さ。月の表側にロケットを置いて、いざ裏側へ。明るいところから暗いところへ。ところで飛行士にとって月の裏側は子供の頃からの夢だった。

「なんのために?なんで?」

子供の頃から自分の夢についてそう聞かれて育ってきた。そんな時、飛行士はうまく答えることができなかった。でも行きたいんだ、理由はない。ただそうとしか言えなかった。そんな飛行士が初めて夢を叶えたのだ。辺りは寒くて、とても暗い。太陽の光もない。頭に付けたライトで辺りを照らして、飛行士はペンギンを探し始めた。でもロケットからたくさん見えていたペンギンは見渡す限りどこにもいない。気づけばロケットからずいぶん離れてしまった。そろそろ戻らなければ、そう思った時だった。

あれ?ここはどこだろう?

夢を叶えて月の裏側までやってきた飛行士は、自分が今どこにいるのかわからなくなってしまった。それから何時間も歩いた。そして疲れてもう何もかも諦めかけた頃だった。

モフン

何かにやわらかいものにぶつかった。飛行士があわててライトで照らすと、そこには大きな真っ黒な塔のようなものが立っている。もしかするとこれが月の裏側に住むペンギンだろうか。そう思った飛行士は上を見上げたが、あまりにも大きすぎて、てっぺんが見えない。おそるおそる、手を伸ばすと。

モフン

毛は柔らかく、その下はあったかくて、弾力があった。まずはこれがペンギンであることを確認しないと。月は地球と違って重力が弱い。飛行士はその生き物の毛をつかむと、てっぺんを目指して登っていった。

モフン、モフン

弾力があって、時々跳ね飛ばされそうになりながら必死になって登っていく。こういうことも想定して色んな訓練をしてきたおかげだ。飛行士の夢は月の裏側だったけど、そこに住むペンギンの調査のためにここに来たからだ。何時間も登って、宇宙服に装備していた食べ物や飲み物を飲んで、てっぺん目指して登ってく。ちゃんと疲れたら休むことも忘れずにすると段々辺りが明るくなってきた。辺りの星の光が近くなってきたんだ。ライトの光はもういらない。そうしてまた何時間も登ってようやくだった。見上げると黒くて丸い目、とがったクチバシ。

ペンギンだ。そしてなぜか上を向いている。飛行士も同じように上を向くと、そこには幾千幾万もの星の光があった。辺りが暗いせいでとても目を開けていられないほどに強い光。辺りを見渡すと他のペンギンたちが見えた。みんな上を向いている。まるで暗い海の中からペンギン達が顔だけ突き出しているみたいだ。下を向けば真っ暗。残念だけどロケットがどこにあるのかはわからなかった。

「もう戻れないのかな。でもここまで来ることができた。ペンギンにも会えた。こいつらと一緒に星でも見て過ごそうかな」

何日もかけてたどりついた夢の先。一気やってきた疲れのせいで、飛行士は思わず手を離してしまった。するとペンギンが器用に飛行士の服をつまんで、しばらく飛行士を見つめた。あまりのことに驚いて、口をポカン。ペンギン今度はクチバシで摘んだまま、お腹を大きくふくらませて飛行士を自分のお腹に落としてしまった。

モフーーーーーン!

飛んでいく。弾力のあるお腹にぶつかった飛行士はすごい勢いで飛んで行ってしまった。

そのまま気を失った飛行士が気がつくと目の前にロケットが。明るい月の表側。振り返ると、遠くに暗い裏側があった。さて、次は何を目指そうか。その前にこのことをどうやってまとめたもんだろう。

なんで?なんのために?

そんなもの決まってる。飛行士はロケットに乗り込んだ。

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